
スペキュロスとラムレーズンのバターサンド
〈開発者の詳しい解説〉
スペキュロスというのは、スパイスで香りを立てた焼き菓子のこと。
今回使ったのは、シナモン・ジンジャー・カルダモン・ナツメグ・クローブ・胡椒・フェンネルの7種を混ぜたブレンドスパイス。
それぞれ香りの性格が違うから、入れ方を間違えるとケンカしちゃうんですが、うまく重ねると、香りに厚みと奥行きが出る。
たとえば、シナモンに含まれるシンナミックアルデヒドは、あたたかくて甘い主軸の香り。そこにジンジャーのジンジャロールや胡椒のピペリンがピリッと入り込むことで、香りにキレが生まれる。
さらにナツメグやクローブのオイゲノール系が下支えになって、全体を落ち着かせてくれる。カルダモンの1,8-シネオールやフェンネルのアネトールなんかは、逆に少量で華やかさを足す薬味的な役割。
このスペキュロススパイスを、天然酵母を加えたサブレ生地に混ぜ込んで、焼き上げたときにスパイスが立ち上がるように設計しています。天然酵母の微発酵による酸とスパイス香が合わさって、スパイシーなのにどこか発酵菓子のような雰囲気になる。
バタークリームには、ダークラムを使用。
香気成分としてはバニリン、ファーフリュール、クマリン、エステル類など、木樽の熟成香と糖蜜様の甘い香りが特徴。ラム酒って、甘くて香ばしくて、ちょっと焦げてる。スパイスの複雑な香りと音域が重なるんです。
そこに合わせたのがラムレーズン。
大粒のカリフォルニアレーズンをダークラムに漬け込んで、
糖とエタノールが果肉内で再結合した糖エステル様のまったりした香味に育ててから使用。バタークリームに混ぜ込まず、果実のまま噛んで“ぷちゅっ”と香らせる設計。
下に敷いたのはカシューナッツ。
特に香りはないけれど、ナッツ特有の脂肪がバタークリームと舌の上で一体化する。しかもやさしい甘みがあるから、スパイスとラムに挟まれても自己主張せず、全体を支えてくれるんです。
まとめると、
スペキュロススパイスの香り構造(揮発+残香)
×
ダークラムの深みと甘香(アルコール由来の拡散力)
×
レーズンの糖と酸、果実としての密度
×
カシューナッツの脂肪によるまとめ役
この4つが**「主張」じゃなく「合奏」するように組んだバターサンド。
口に入れたときに、一番最初にくるのはスペキュロスの香り。
そのあとで、バターの甘さとラムがふわっと広がって、
レーズンがはじけて、ナッツがコリっと音を立てる。
正直、香りも味も食感も情報量が多すぎるお菓子なんだけど、
全部が重なってから、一拍おいて、ちゃんとひとつにまとまるように設計しています。
お試しあれ。
スペキュロスサンド3個
バターサンド(3種のローストナッツとカレンツレーズン)3個
内容:6個入
保存温度:冷凍
賞味期限:約2週間